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2017年展望─世界的な景気拡大で日銀も緩和縮小へ

景気改善期待や長期金利引上げ準備も始めた日銀の円安牽制が今年の相場テーマとみています。

安倍首相への根回し?

「安倍首相と日銀・黒田総裁が4ヵ月ぶりに会談」と報じられました(1月11日)。会談後、黒田総裁は記者団に「米国は世界最大の経済で、経済成長が加速している」等と首相に説明したことを明らかにしました。黒田総裁は、昨年12月に政策決定会合で国内の景気判断を上方修正してからは、「世界経済は、全体として上向きつつあり、グローバル金融危機──いわゆるリーマン・ショック後の調整局面をようやく脱し、新たなフェーズに入りつつある」(12月26日の講演)と踏み込んだ発言をするようになりました。英国のEU(欧州連合)離脱国民投票の結果等が「日本経済にも悪影響を与える」との立場を示し過剰反応との印象を市場に与えた昨年半ばからは一変し、黒田総裁はこれまでになく世界経済、そして日本経済の先行きに自信を示しました。

総裁発言で「日本銀行の政策変更が近い」と予感したのは筆者だけではないと思います。報道された「4ヵ月ぶりに会談」とは、昨年9月に「総括的な検証」を踏まえ世界でも稀な政策の導入を決める12日前(9月9日)に、黒田総裁が官邸に出向いて安倍首相と会談したことを指します。今回の会談も「何らかの政策変更を控えた事前の根回し」との憶測を生みそうです。

円安抑制のためにも長期金利を引上げか?

「何らかの政策変更」とは何なのでしょう? 手がかりは(i)「円安ドル高が日本経済に及ぼす影響等を話し合ったとみられる」との一部メディア報道や、(ii)この安倍・黒田会談と同じ日に、たたみかけるように日本銀行が公表した筆頭理事の講演要旨がヒントになりそうです。

(i)「円安が日本経済に及ぼす影響」という言葉で想起されるのは、「過度な円安が日本経済に与える打撃を日銀は懸念した」と市場が受け止め「円安125円の壁」を意識した黒田総裁の円安牽制発言(2015年6月10日)です。

一方、(ii)筆頭理事は講演で、上述の昨年9月に導入したイールドカーブ(期間別利回り曲線)の形状変化を中央銀行がコントロールするという前代未聞の政策の歴史的意義と課題を説明しました。その際、「イールドカーブのうち長めの金利」については、(日本銀行が責任を持つ)「経済や物価へ直接的な影響」よりも、むしろ(日本銀行は影響力の行使を控えるべき)「保険や年金といった金融の社会インフラの機能と強い関連を持つ」との踏み込んだ発言がありました。

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これらの手がかり材料を総合しますと、ほぼ完全雇用状態となったのに、さらにトランプ次期政権が減税策や財政出動で米国景気を過熱させれば米国金利のさらなる上昇が見込まれる、と日本銀行が認識して政策対応を考え始めたとの解釈が可能です。日本の「長めの金利」を早めに徐々に上昇させないと、日米金利差が拡大し「円安125円の壁」も突破して日本経済は打撃を受けかねない、との警戒感があるようです。

2017年のマーケット展望

これらを踏まえ2017年を展望しますと、(1)過熱が懸念されるほど良好な米国景気、(2)(米国を始めとする世界景気改善を追い風とする)日本景気や企業業績の改善期待、(3)(日本銀行も警戒する)円安進行、がマーケットの相場テーマとなりそうです。とりわけ(1)(3)については、トランプ次期大統領の政権後期には表面化するとみられる、財政出動に伴う財政収支の悪化や景気過熱に伴う経常収支の悪化──「双子の赤字」がドル安・円高要因になるまでの向こう数年間は、円安が進行すると考えられます。資産クラス別では、世界的な景気改善に伴って先行きの企業業績期待が下支え要因となる日本株や米欧株には投資資金が流入しそうです。また、円安進行は外債(為替ヘッジなし)等の投資にも追い風とみられます。

(執筆者)
明治安田アセットマネジメント株式会社
チーフストラテジスト 杉山 修司

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