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米債利回り急上昇─利回り求める内外資金が殺到し一過性か

本邦機関投資家の米債投資意欲の強さは、1㌦=109円到達のドル買い圧力からも推測されます

「インフレ圧力」を警戒して米債利回りが急上昇

米国債券市場では残存年限が長めのゾーンで国債利回りが急上昇(債券価格は下落)しており、イールドカーブの傾きが急になるスティープ化が進んでいます(図表)。きっかけは「景気回復が早まりインフレ圧力が高まる」との警戒です。インフレは、債券投資における最大の弱点だからです。

20210319_insight_rev.png全米で7700万人が新型コロナウイルスのワクチン接種を受け、死者数(日次)は1月をピークに2月は月間で35%減少。経済封鎖の緩和が見込まれる中、昨年末の0.9兆㌦のコロナ経済対策に加え、バイデン新政権の1.9兆㌦の大型財政出動を議会が承認。国債増発による需給悪化懸念だけでなく景気刺激によるインフレ圧力が警戒されているのです。

3~4月の米国インフレ率は2%超えか

しかも「今年3~4月のインフレ率が2%を超える可能性」をFRB(米連邦準備制度理事会)高官が示唆(3月2日の講演)、米債利回りのさらなる上昇要因になりそうです。

本当にインフレ圧力は高まるのでしょうか。前回1月のFOMC(連邦公開市場委員会)議事要旨では、(i)経済封鎖で抑制された需要のリバウンドやコロナ禍の供給制約等に伴う一時的なインフレ圧力と、(ii)2%物価目標への持続的なインフレ持ち直しを区別していることが読み取れます。

「3~4月のインフレ率2%超え」につきパウエルFRB議長は3月のFOMC会見で「前年同月比で昨年のコロナ禍のデフレ状態の影響が出る一時的現象」と述べました(上述(i))。

テーパリング検討は物価と雇用の改善を確認の後

一方、「物価も雇用もFRBの政策目標達成には程遠い」とパウエル議長は強調します(上述(ii))。コロナ禍で14%台(昨年4月)だった失業率は6%台(直近2月)とはいえ「実勢ベースでは10%近い」(FRB高官)厳しい雇用情勢です。「なお職場復帰できていない950万人の失業者のため忍耐強く金融緩和策を続ける」とパウエル議長は述べました。

今年の経済成長率予測を3ヵ月前の4.2%から今回6.5%へ大幅に上方修正、力強い景気回復が見込まれますが、「テーパリング(量的緩和策の縮小)検討は物価や雇用の改善を実際に経済指標で確認してから」と述べました。米債利回り急上昇を抑える効果が見込まれる発言でした。

FRBはバランスシート急拡大させ巨額の資金供給

FRBは米国債や住宅ローン担保証券を市場から買い取る量的緩和策を続けており、FRBのバランスシートは直近1年間で3.4兆㌦拡大(2020年2月最終週4.2兆㌦→直近3月8日週7.6兆㌦)しています。0.9兆㌦の昨年末の財政出動や1.9兆㌦のバイデン政権の大型財政出動に伴う国債増発分がかりに0.9+1.9=2.8兆㌦としても、3.4兆㌦の国債等買入れ代金がFRBから金融機関に支払い済みで、FRBにある金融機関の預金口座に滞留しており、「国債増発分をも呑み込む勢いの量的緩和策」との構図とみることもできます。米債利回り上昇がいつまでも続くとは考えにくい状況です。

その上、FRBのバランスシート拡大ペースは、リーマン危機の時よりはるかに速く、強力な量的緩和策です。当時は6年間かけバランスシートを3.6兆㌦拡大(2008年8月最終週0.9兆㌦→2014年12月最終週4.5兆㌦)。今回は僅か1年間で、これに匹敵する3.4兆㌦急拡大させ、なお拡大中です。

利回りを求める投資家に米債スティープ化は好機

金融機関には、①こうしたFRBへの国債等売却代金の流入に加え、②1.9兆㌦のバイデン政権財政出動による国民への現金給付が預金としても流入します。その資金は一体どこへ向かうのでしょうか。バーゼル銀行規制等で自己資本比率算出に不利な扱いとなる株式等リスク性資産よりも、多くは債券市場へ流入し、米債利回りの上昇を抑え、やがて引き下げる要因にもなると考えられます。

また中央銀行のマイナス金利策に苦慮する日本、ユーロ圏等の年金基金や保険会社など長期運用する機関投資家にとって、10年債や30年債など長めゾーンで利回りが上昇するイールドカーブのスティープ化は、米債投資の好機と考えられます。直近2ヵ月間で6円もの円安進行(1㌦=103円台→109円台)には、ドルを買い進め米債投資を再開し始めた本邦機関投資家の存在が推測されます(注)。

(注)MYAM Market Report「米債投資、復活の兆し─円高圧力の弱まりと利回り上昇で」(2021.1.22)

米債とりわけIG社債が選好されやすい

こうした機関投資家にとって、国債より利回りが高いため将来的なインフレの悪影響に対する収益バッファー(緩衝材)ともなる社債が選好されやすいでしょう。特に「1930年代の大恐慌でもデフォルト(元利払い不能)が殆ど無かった」とされる長期運用に適したIG(Investment Grade、投資適格級)社債は、景気の底から山へと力強く動き始めた今、企業業績にも追い風で、選好されやすいでしょう。

(執筆者)
明治安田アセットマネジメント株式会社
チーフストラテジスト
杉山 修司

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