資産運用情報館

資産運用に役立つ情報をレポートします。

米債投資、復活の兆し─円高圧力の弱まりと利回り上昇で

米住宅不況を先送りする財政出動でFRB緩和強化の必要が薄れ1㌦=100円割れは遠のきそうです

今夏の住宅不況を先送りする米議会の財政出動

「FRB(米連邦準備制度理事会)が金融緩和をさらに強化する必要は薄れた」との観測で、外為市場では円高圧力が弱まり、1㌦=100円割れは遠ざかったようです。昨年12月のコロナ追加対策法での0.9兆㌦の財政出動がきっかけです。さらなる大型の財政出動観測も本邦機関投資家の外債投資再開を後押ししドル買い圧力となりそうです(後述)。

追加対策法で特筆すべきは、銀行や地域金融機関等に家計や企業へのローン返済猶予を奨励する、昨年末迄だった時限措置の1年間延長です。返済猶予すれば、正常債権扱いを認め(目先の利益や自己資本を減らすため銀行等が嫌う)貸倒引当金の計上等を不要とする時限措置です。

返済猶予期間が失効すると通常の延滞債権の扱いに戻り、住宅ローンなら延滞が4ヵ月続けば、銀行等は担保物件の住宅を差し押さえて売却し不良債権を回収するのが一般的です。FRBの超低金利策で住宅市場は活況ですが、住宅売却が急増すれば、需給が悪化し「今夏にも一転して住宅不況になる」と再度の景気悪化が警戒されていました。

返済猶予奨励策の延長で、差し押さえ売却の急増が1年先送りされた形です。その間、ワクチン接種が広がれば、全米で270万世帯(米抵当銀行協会)もの返済猶予中の世帯数の減少、ひいては住宅不況の軽減が期待できます。

さらに追加対策法により、当初のコロナ対策法と比べれば半額ですが、国民への現金給付(一人当たり1200→600㌦)や失業保険上乗せ給付(週600→300㌦)が延長されました。最近のコロナ感染急拡大で返済猶予を求める世帯数が急増することを当面抑制する効果がありそうです。

加えて、資金調達力の弱いノンバンク(ローン組成と集金回収の専門業者)が低所得者層向け中心に全米の住宅ローン市場で50%ものシェアを占める構造的な脆弱性の軽減策も追加対策法は定めました。公的資金90億㌦のノンバンク注入を可能とし、これらに融資する地域金融機関の連鎖破綻を回避、金融システム不安を封じ込める策です。

景気下振れを警戒するFRBの慎重姿勢に変化

この追加対策法やワクチン接種開始を背景に、景気の下振れリスクを警戒してきたFRBの慎重姿勢にも変化がみられます。昨秋、コロナ対策の緊急融資制度の未使用資金返還をFRBに求めたムニューシン財務長官に時期尚早と異議を唱え慎重だったシカゴ連銀エバンズ総裁が、「利上げは2024年までしないと私は思う」(1月7日)と超低金利策の継続を強調する一方、量的緩和策は今春にも見直す可能性に言及。「経済情勢が悪化すれば量的緩和を強化するが、好転すれば縮小もあり得る」と、買入れ国債の年限短期化など緩和縮小の可能性を示唆したのです(1月4日)。

またFRBのクラリダ副議長は、「最近のコロナ感染急拡大は目先のごく短期間では景気下振れリスクだが、ワクチン開発の進展により、今年から来年にかけ景気見通しは明るくなっており、景気下振れリスクは低下したと私は思う」と述べました(1月8日の講演)。

バイデン政権が大型財政出動なら低利回りは是正

景気下振れリスクが低下しつつある中、議会上院選挙のジョージア州決選投票で、それまで大型の財政出動を阻止してきた共和党に代わり、民主党の新政権が実質的に上院も支配できる議席数を獲得。債券市場で長期金利(10年債利回り)がコロナ禍で昨年3月以降割り込んできた1.0%台を回復しました。そして大統領就任を前にバイデン氏が1.9兆㌦と大型の財政出動を表明したのです(1月14日)。これは長め年限の市場金利押し上げ要因です。一方、過去30年間続く低下トレンドの抵抗線が長期金利なら2.5%付近ですので、FRB利上げ開始が見込まれる2023~24年頃にかけ長期金利は概ね1.0~2.5%前後で推移しそうです。

米債とりわけIG社債への投資に復活の兆し

こうした日米金利差の拡大(図表参照)で、これまで外債利回り低下や円高圧力のため外債投資に消極的だった本邦機関投資家にも、外債投資の再開機運が高まりそうです。しかも景気下振れリスク低下が企業業績の回復も下支えし、国債より利回りが高めの社債、特に「1930年代の大恐慌でもデフォルト(元利払い不能)が殆ど無かった」とされる長期運用に適したIG(Investment Grade、投資適格級)社債が景気の底から山へと動き始めた今、選好されやすいでしょう。

20210122_insight.png(執筆者)
明治安田アセットマネジメント株式会社
チーフストラテジスト
杉山 修司

●当資料は、明治安田アセットマネジメント株式会社がお客さまの投資判断の参考となる情報提供を目的として作成したものであり、投資勧誘を目的とするものではありません。また、法令にもとづく開示書類(目論見書等)ではありません。当資料は当社の個々のファンドの運用に影響を与えるものではありません。●当資料は、信頼できると判断した情報等にもとづき作成していますが、内容の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料の内容は作成日における筆者の個人的見解に基づいており、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。また予告なしに変更することもあります。●投資に関する最終的な決定は、お客さま自身の判断でなさるようにお願いいたします。

TOP