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米債投資にダブルパンチ─利回り大幅低下と円高圧力で

米国景気の拡大局面で米債投資してきた機関投資家は、国内IG社債に活路を見出しそうです

米債投資を増やす局面だった米国景気拡大が終焉

米国景気の山/谷の循環を判定する機関であるNBER(全米経済研究所)は、10年8ヵ月続いた歴史上もっとも長かった「今回の景気拡大局面が今年2月に終焉」と判定しました。新型コロナウイルス感染による経済社会的混乱(以下、新型コロナ禍)による急激な雇用悪化などが原因です。

これまで本邦機関投資家は、米国の景気拡大に伴う金利上昇で拡大した日米金利差に着目、米債投資を積極化してきました。JGB(日本国債)では利回りが極めて低く、運用難だったからです。「日本銀行への圧力」を公約に政権奪取した第2次安倍政権が金融緩和を強化させたせいです。こうして円安・株高を演出したアベノミクスが、為替益の上乗せ期待につながったことも米債投資を後押ししました。

利回り大幅低下が米債投資に打撃

ところが、3月には新型コロナ禍でFRB(米連邦準備制度理事会)が合計1.50%ポイントもの大幅な利下げを決定、事実上のゼロ金利政策を採用しました。世界的な株価暴落で安全資産として米国債が買い進められたこともあって利回りは急低下(価格は上昇)、日米金利差は大幅に縮小してしまいました(図表1の楕円内を参照)。

20200907_insight_1.pngしかも、パウエルFRB議長が「我々の生涯で最も厳しい景気悪化」との認識を示し、「数年間はデフレと闘わねばならない」と発言(7月29日)、「デフレとの闘い」の具体策として期待インフレ率の低下防止策を骨子とする新たな金融政策の枠組みをワイオミング州ジャクソンホール講演で表明しました(8月27日)。デフレなら金利は上昇しにくくなります。

円高圧力も米債投資に打撃

加えて、日米金利差が拡大局面から縮小局面へ転じたことで、円高圧力が高まっています。安倍首相の辞任表明も「アベノミクス円安の終焉」を市場に印象づけ、チャート上の巨大な三角もちあいは円高方向に抜けつつあります(図表2参照)。為替益の上乗せ期待が薄れたことも、上述の利回り大幅低下とともにダブルパンチとなり、米債投資は減少に転じる局面に入ったと考えられます。

20200907_insight_2.png米債投資の減少が米国金利の更なる低下を抑える

同様に、ドイツなどユーロ圏の機関投資家にとっても、米債の利回り大幅低下や、数年続いたドル高・ユーロ安の流れが最近逆転したことは、米債投資にダブルパンチです。これら非米国の機関投資家の行動変化は、米債への需要減として、米国金利の更なる低下を抑える要因です。このため、今からの新たな米債投資を機関投資家は敬遠しそうです。

「ヘッジ付き外債は魅力」なのか?

一方、「ヘッジコストが低下したので為替ヘッジ付き外債投資は魅力」との声が一部で聞かれます。前掲図表1でヘッジコストを上乗せした10年債、30年債の日米差(細い実線及び細い点線)が僅かにプラス圏に浮上したからです。

同時に、「米国金利の更なる低下余地は乏しく債券値上がり益は期待薄」(上述)とみる投資家や、「1~3ヵ月毎の為替ヘッジのロールオーバー時のヘッジコスト変動など外債投資ゆえの不確実性が、僅かなプラスの期待リターンでは見合わない」と総合的に判断し、為替リスクのない国内債で高めの利回りの資産を物色する投資家も出てくるでしょう。

国内債券とりわけIG(投資適格)社債なら魅力

こうした市場環境の変化によって、為替変動リスクの心配も無い国内債とりわけ(JGBと異なり)プラスの利回りが期待できる社債に機関投資家は活路を見出しそうです。「1930年代の大恐慌でもデフォルト(元利払い不能)が殆ど無かった」とされるIG(投資適格)社債ならば、新型コロナ禍による景気悪化も乗り越えられると期待されます。

(執筆者)
明治安田アセットマネジメント株式会社
チーフストラテジスト
杉山 修司

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