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市場の楽観にFRBが冷や水─米国景気のV字回復は難しい

相場活況で覆い隠されたコロナ禍の深刻さが「再び暴落を招く」と市場は警戒し始めたようです

非常事態の政策対応によって株式市場は活況

新型コロナウイルス感染拡大で3月に歴史的な大暴落となった米国株(NYダウ)ですが、その後、FRB(米連邦準備制度理事会)や米政府・議会の非常事態対応によって市場心理が改善したことから、株価は大きく上昇しています。リーマンショックから続く上昇トレンドの上値抵抗線を上回る、「巡航速度」を超えた株価上昇ペースです(図表1)。

20200728_insight1.png相場活況で市場部門が稼いだ米銀大手は黒字決算

この相場活況で、米銀大手4行の4-6月期決算(7月中旬発表)では、株式・債券のトレーディング収入など市場部門収益が空前の好調となった3行(JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ)については黒字決算でした。コロナ禍で家計や企業の返済が滞ることを見越し、各行とも大幅に追加計上した費用(=貸倒引当金の積み増し)を補って、黒字を維持した形です。

残り1行の住宅ローン最大手(ウェルズ・ファーゴ)は、市場部門が比較的小規模なこともあり、過去最大規模で貸倒引当金を積み増したことによって赤字決算となりました。同行の赤字決算は、リーマンショックの2008年以来です。

景気見通しが悪化、貸倒引当金を大幅に積み増し

各行とも貸倒引当金を、3ヵ月前発表の1-3月期決算を上回る規模で大幅に積み増しました。その理由は「景気低迷の長さと深刻さについて、見通しが前四半期に想定した以上に著しく悪化したため」(ウェルズ・ファーゴCEO)でした。

それでも現時点では、失業給付が週600ドル上乗せ支給される等、コロナ禍対策の時限措置によって「まだ景気悪化の影響は(延滞率等に)表れておらず、表面化するのはこれから」(JPモルガン・チェースCEO)との厳しい認識です。「不良債権の増加はこれからで、米国景気のV字回復は無いと示唆した米銀決算」(Bloomberg、7月15日)と言えます。

「とても深い洞穴」に転落した米国経済

FRBの6月会合(6月9-10日)でも、「米国景気のボトム(底)は4月だった」と見込む一方で、感染の第2波を警戒する委員が大勢であったことが議事要旨から読み取れます。

ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は「たとえ年後半から景気持ち直しが始まるとしても、米国経済が転落した『とても深い洞穴』から抜け出すには相当な期間を要する」との認識です(7月16日)。「感染者数が増加している州では、景気持ち直しが失速しつつある」からです。

「再就職できない失業者が数百万人規模で発生」

パウエルFRB議長は「国民が新型コロナウイルス感染が制御されていると確信できなければ完全な景気回復は困難」として、たとえ景気が持ち直しても再就職できない失業者が「数百万人規模で発生し得る」との認識です(6月16日)。

確かに、4月初に600万件を超えていた新規失業保険申請件数(毎週公表)が6月からは200万件を下回る推移となりましたが(図表2の棒グラフ<左軸>)、失業保険継続受給者数(毎週公表)の改善は極めて緩慢であり(図表2の折れ線グラフ<右軸>)、なお2000万人近くもの大量失業です。

20200728_insight2.pngFRB副議長「再び暴落してもおかしくない」

このため、クォールズFRB副議長(銀行監督担当)は「市場は落ち着きを取り戻したが、いずれ再び暴落してもおかしくない」(Volatility in markets has decreased but may well return.)と警鐘を鳴らします(7月15日)。例えばバンク・オブ・アメリカでは、住宅ローンなど家計向け貸出で「返済繰り延べ要望を180万件受け付けたが、なお170万件で返済が滞っている」(7月9日時点)のが現状です。「コロナ禍の需要減で債務者の破綻、ひいては銀行不良債権の増加が避けられない」(クォールズFRB副議長)情勢になりました。

(執筆者)
明治安田アセットマネジメント株式会社
チーフストラテジスト
杉山 修司

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