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金融バブル崩壊─大手金融の破綻阻止で世界恐慌になりにくい

低格付け企業の破綻等は急増しても、信用逼迫の軽減策で、不況は比較的短期で立ち直りそうです

世界恐慌を招いた「90年前の大暴落にも匹敵」

米国株(NYダウ)の昨日(3月23日)の終値は、先月の史上最高値から37%安です(図表)。第二次大戦の遠因ともされる世界恐慌を招いた「1929年大暴落にも匹敵」との声が市場で聞かれます。確かに高値から数週間の初期の暴落はそっくりです。さらに当時は約3年後、89%安となりました。

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大手金融の破綻阻止で世界恐慌を招く公算は低い

しかし今回は大暴落が世界恐慌を招く可能性は低く、米国のリセッション(景気後退)は不可避でも、従来の危機と違って比較的短期で不況から立ち直れる諸要因があります。

世界恐慌になりにくい理由は第一に、大手金融機関の破綻を阻止する措置をFRB(米連邦準備制度理事会)がとり、クレジット・クランチ(信用逼迫)の軽減に先手を打ったからです。旧・米証券大手リーマン・ブラザーズ(以下、リーマン社)のような資金繰り難による破綻の回避を狙ったようです。

リーマン危機の2008年当時、「リスクの高い投融資に走った金融機関を国民の税金で救済すれば、モラル・ハザード(倫理観が欠如した行動)を助長する」との世論が支配的で、リーマン社の公的救済は見送られました。ところが資金繰りに逼迫したリーマン社が、内外の企業や金融機関に対する巨額の投融資を一斉に回収する「貸し剥がし」に走ったため、貸し剥がされた側も資金をかき集めるクレジット・クランチの玉突き的な連鎖拡大が世界各国に伝播しました。

また1929年は、①証券会社の破綻も辞さず、株価高騰を利上げで抑えたり、②暴落後に資金供給を絞ったFRBが招いた信用逼迫で、大暴落が世界恐慌に発展しました(注)。

(注)「1929年の大恐慌直前と今との驚くべき共通性─FRBが招いた29年株価大暴落と世界恐慌の教訓」(週刊金融財政事情2020年2月24日号pp.32-36)

しかし今回のFRBの危機対応は違います。中央銀行が「最後の貸し手」として金融機関の資金繰りを支える連銀窓口貸出(discount window)の利用を強く呼びかけたり、資金調達市場の機能回復を狙って大手証券(primary dealer)の資金繰りを支援する等、一連の措置をとりました。「大手金融機関が破綻する芽をほぼ摘み取った」と考えられます。

ドル資金に殺到する金融機関に各国中銀が協調

世界恐慌になりにくい理由の第二は、各国中央銀行がドル資金供給を強化する協調行動で、米国外での大手金融機関の破綻阻止やクレジット・クランチ軽減に動いたからです。

かねてより各国当局は「危機発生時にドル資金調達が困難となり、危機を世界中に伝播させる国際金融市場の構造的な弱点」を認識し、IMF(国際通貨基金)も2018年4月や2019年10月の報告書でこれを警告しました。欧州や日本など米国外の金融機関は、貿易金融の事業法人や、米国市場で株式など資産運用する金融法人のため、為替スワップ市場等でドル短期資金を(借り換えを数ヵ月毎に繰り返しつつ)調達しています。このため調達コストが急騰すると、資金繰り難や逆ザヤに耐えられず、顧客企業からドル建て融資を回収する貸し剥がしやドル建て資産の換金売りを助長し、危機を各国に伝播する構造的な弱点があるのです。

リーマン危機時に、各国中銀はドル資金を融通し合って自国の金融機関にドル資金を大量供給する仕組みの整備を進めました。今回、当初の6ヵ国に9ヵ国を加え中銀の協調を拡大する一方、日本銀行など主要中銀が、長めの資金(3ヵ月物)供給を加えたり、供給頻度を毎週でなく毎日にする等、ドル資金供給の強化策を迅速に打ち出しました。

為替スワップ市場でユーロ/ドルは、過去の金融危機に匹敵するドル(3ヵ月物)調達コストの急騰が和らぐ兆しもみられます。ECB(欧州中央銀行)によるドル資金の大量供給が効いた様子です。ドル/円ではなお高止まりしていますが、日銀のドル資金供給の強化は、金融機関のドル資金繰り逼迫を軽減し、様々な資産に換金売りが殺到している市場のパニックを徐々に和らげる効果が期待できそうです。

低格付け企業の破綻も最小限となり得る信用供給

新型肺炎の感染拡大で、営業を制限された飲食店などサービス産業や、運航を取りやめる航空各社等が各国で相次ぎ従業員のレイオフ(一時解雇)を表明しており、失業者の急増は不可避な情勢です。加えて、かねてFRBが警戒してきた、低金利環境で過度にレバレッジを高めた放漫経営に起因する低格付け企業の破綻急増も見込まれます。

しかし米国ではFRBが銀行各行に、リーマン危機以降に積み上げてきた厚い自己資本を吐き出し、不良債権化も辞さぬ覚悟で(延滞等が見込まれる)家計や企業から貸し剥がしをせず融資継続を求める異例の指導をしています。感染拡大が下火になるまで数ヵ月間のこれら非常時対応で、「今回の不況は比較的短期で立ち直れる」と考えられます。

(執筆者)
明治安田アセットマネジメント株式会社
チーフストラテジスト
杉山 修司

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